『マリス博士の奇想天外な人生』

科学研究の背後にある動機

科学はプログラム化された計画となり、科学者はその管理者となる。20世紀における科学上のもっとも重要な展開は、科学研究の背後にある動機が、好奇心から経済的なものに変化したことだろう。大学でも、政府機関でも、企業の研究所でも研究者に払う金が必要となる。研究室のリーダー、技術員、博士研究員、大学院生、秘書などの手当である。研究室の建物、装置、出張旅費、オーバーヘッドが必要となる。

オーバーヘッドとは研究組織に支払う一種のショバ代であり、管理者の給料や経費、経理、事務員、建物や地所の管理経費、警備員、紀要の出版代、図書館司書、清掃員などの諸経費が賄われる。これらには莫大な費用を必要とし、自分の研究を維持し、発展させるため研究者には大きなプレッシャーがかかる。

公的研究資金は全米科学基金、国立衛生研究所、国防総省、エネルギー省などの機関から分配される。もちろん資金をめぐってたいへんな競争となる。そこでわれわれはこう質問すべきなのである。「お前らは、オレたちの大切な税金を使って、いったい何をやっているんだ」と。

(キャリー・マリス著・福岡伸一訳『マリス博士の奇想天外な人生』早川書房、2000年)

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