『マリス博士の奇想天外な人生』

環境世界会議

連邦政府大気環境委員会の委員長は今夜、彼の秘書、そしてカリフォルニア工科大学から馳せ参じた数人の専門家とともに、夕食の席についた。委員長は、ほんの少し前CNNのインタビューで、オゾン破壊問題を研究するためさらに5000万ドルの資金が必要になると発表していた。高そうなカジキマグロのステーキをはさんでテーブルにはCNNの新しい科学担当記者も同席している。彼らは今日のニュースが首尾よく放映されたことに乾杯していた。晩餐の締めくくりはクリーム・キャラメルのかかったデザートとブランデー、そしてカプチーノである。彼らは次の秋、オスロで開かれる環境世界会議2000での再会を約束しあった。

オゾン破壊問題のニュースは全国公共放送(NPR)のラジオを通じて流れている。あなたも帰りの車の中で聞いているかもしれない。そしてここのところ、やれシェービングクリームのエアロゾルがダメ、やれヘア・スプレーがダメ、とさんざんおどかされているにちがいない。ラジオをつけるたびに、この手のニュースが流れ、環境問題が取りあげられるたびに、あなたはかなり罪の意識を感じることだろう。

スーパーで買い物をするときは、エアロゾルを使用していないシェービング・ジェルを選ぶようにする。スピードを出さないようにして帰る。後部座席に置いたテイクアウトのラージサイズのペペローニ・ピザの香りが車内に充満している。ピザは少々冷めてきているけれど、これでも地球のことを考えて運転しているのだ。

(キャリー・マリス著・福岡伸一訳『マリス博士の奇想天外な人生』早川書房、2000年)

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