オゾン層の破壊
科学的な根拠がない以上、いかにわれわれ人類が上空のオゾン層を破壊しているといっても無意味でしかない。オゾン層に穴があくことはあるかもしれない。しかしそのときは、次のようなことが起こるはずである。太陽からやってきた紫外線はオゾンホールを通り抜けて地球の大気を直撃する。大気の層は何キロもの厚みがあり、そこに含まれている酸素が紫外線を吸収する。するとそのエネルギーによって酸素からオゾンが生成され穴をうめる。つまり、太陽が発した紫外線が酸素に出会うとオゾンが発生するのである。
発生したオゾンは紫外線を吸収し、紫外線がそれ以上、下層にある酸素に達するのを防ぐ。地表面ではわれわれが呼吸する酸素があり、上空にはオゾン層があるのはこのメカニズムによるのだ。仮に、全世界の国々が一致団結し、大枚をはたいてオゾン層をなくそうとしても、それは不可能である。大気からすべての酸素がなくならないかぎり、オゾンをなくすことはできない。もしそれが実現した暁には、われわれは呼吸できない。植物が大量の酸素を供給してくれないかぎりは。
つまり、上空の大気のオゾン層は自律的に調節されているのだ。仮に何かを測定してオゾン量が減ったといっても、それはオゾンがなくなったとか、なくなろうとしているといったことを示しているのではない。(中略)人間の活動が地球の温暖化とオゾン層の減少の原因であるとする考え方は、ちょうど石器時代に描かれた壁画のせいで、そのあと氷河期が来たと主張するのと同じくらいのばかげた話である。
(キャリー・マリス著・福岡伸一訳『マリス博士の奇想天外な人生』早川書房、2000年)