『マリス博士の奇想天外な人生』

紫外線と皮膚ガン

オゾン層が減少していることを示す間接的証拠というのもあてにならない。いわく皮膚ガンが増加している。たとえ皮膚ガンが増加しているとする報告が本当だとしても、それはただちに紫外線量が増加していることにはならない。皮膚ガンの増加は人間が陽光を求めて移動してきたからかもしれない。過去40年間、アメリカ北部および北東部の人口は、南部および南西部に移動している。

同じ時期に、日焼けした肌は一種のファッションになった。ゴルフの流行はどうだろう。一役買っているかもしれぬ。もう一つの要因は、医者も患者も最近は肌を注意深く眺めて、どこかに小さな黒いシミはないか、それが急に大きくなってはいないかを探す習慣が身についてきたということがある。つまり、診断力の向上が症例数を増やす。地球上に降りそそぐ紫外線量を疑いの余地なく測定するためには、ガンの数を数えていてはだめである。

地表での紫外線量を測定すべきなのである。南極観測隊がやっているように、地表面に一台6000ドルの紫外線測定器を設置して、数年間にわたって観測を行なえばよいだけの話だ。このような測定を行なった例はないのだろうか。もしあるのなら、どこかで耳にしてもよいはずである。

(キャリー・マリス著・福岡伸一訳『マリス博士の奇想天外な人生』早川書房、2000年)

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