大宅壮一『無思想の思想』

権勢と反逆を生む山口県(2)

毛利藩では、高杉の率いる奇兵隊という百姓、町人を加えたゲリラ部隊が、萩城を攻略して、藩主をおさえ、政治犯の釈放までやってのけたところは、小型のパリ・コミューン、”萩コミューン”に成功したのである。

各藩のこういった連中の上にのっかって、徳川政府を倒し、明治政府をつくる上に、いわば共産党の書記長のような役割をしたのが岩倉具視である。

萩の町を歩くと、明治の”元勲”たちの生家とか旧宅とかいうものがやたらにあって、その前に石の記念碑が建っている。これらの家は、ひどく見すぼらしいものだが、そういうところに育っても、ひとたび社会変革の風雲に乗ずれば、大臣、大将となり、最後は神にもなれる。革命というものはこんなにボロイもんだ、ということを教えているようだ。

野坂参三氏も志賀義雄氏も、この萩の生れである。野坂氏の父小野梧右衛門は骨董商で、碁や俳句をたしなんだ。参三氏はその三男で、野坂家をついだ。志賀氏の父は川元筆助といって、大島郡の沖浦村の出身で、内海航海の船長などをしていた。義雄氏はその二男で、萩家をついだ。どっちも秀才で、育った環境も、養家をついだ点もよく似ている。

(大宅壮一「権勢と反逆を生む山口県」『文藝春秋』昭和33年3月。大宅壮一『無思想の思想』文藝春秋、1991年より引用)

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