『マリス博士の奇想天外な人生』

エイズの真相(1)

レトロウイルスがヒトのゲノム中に潜んでいるのはそれなりの理由があるはずだ。われわれのゲノムのかなりの部分がレトロウイルスの配列から構成されている。ゲノム中には無用の配列があると主張する人々もいるが、それは間違っている。もし、われわれの遺伝子の中に何か特別な配列があるのなら、それにはそれなりの理由があるのだ。生物はそう簡単にムダなことはしない。私はかつてある遺伝子配列をバクテリアの中に入れこもうとした。ところが、その配列がバクテリアにとって不必要ならば、バクテリアはただちにそれを取り除く。ヒトの遺伝子も、バクテリアと同じくらい賢く振る舞うはずである。

HIVはある日突然、熱帯雨林やハイチから出現したものではない。HIVはまさにある日突然、ロバート・ギャロの手中に現われたのである。それは、彼が新しい経歴を必要とした時と一致している。HIVは昔からこの地球上に存在していたのだ。大都市のエイズ患者だけを対象にHIVを捜すから、HIVが都市に限局しているように見えるのである。一度それをやめてみれば、HIVがどこにでも存在する普遍的で無害なウイルスであることに気づくだろう。

HIVがずっと昔からこの地球上に存在し、母親から子供にも移行することが分かっている以上、HIV陽性の子供の母親に対して抗体検査をすることにどんな意味があるだろうか。特に母親が病気の徴候をまったく示していない場合、なおさら不必要である。

(キャリー・マリス著・福岡伸一訳『マリス博士の奇想天外な人生』早川書房、2000年)

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